記憶

香りの強い煙草だ。

見た事もない銘柄。

吸うのではなくふかすのだよと君の唇が煙りを吐く。

すかさず 唇を重ねる。甘い味が私に移る。

ずっと前から こうしてやりたかった。

好きだからとかじゃなく

私が思ってた事を確かめたかっただけ。

ずぅっとむかしの出来事を。

月に泣く夜

体調のせいか
凄く気持ちが不安定。

たとえ抱きしめてくれる人がそばにいても癒されることもない この現状。

沢山の悪い事がしたくなりタバコを吸ったりお酒をガブ飲みする。

破滅に追いやる。
馬鹿になりたくなる。
自分を傷つけ壊したくなる。

何もかも要らなくなるのに
自分だけは無くしたくない。

確かめるように
泣きながら 何度も自分を壊す夜。


雪の朝、誰もまだ来ない校庭。

真っ白なキャンパスを 自分だけの足跡で埋めていく。
皆が雪だるまを作るのに必要とする 壁の上などにある土の付いてない綺麗な雪を片っ端から落としていく。

車の上に積もった雪を払いのける。
雪から開放され息を吹き返したように 本来の姿を現わす車体。朝日でボンネットが光る。

運動靴も手袋も雪まみれ。
冷たさがじわじわと染み入ってくる。
そんなことは御構い無しに
私は夢中になって楽しんだ。

「白く美しいもの」を誰よりも先に壊したり汚したりすることに。


生活や仕事の事を気にしなければならない年齢になってから雪の朝はつまらないものになってしまった。

またひとつ
失ったものを見つけて心が痛い。