K

君の胸に頬を近づけると

「僕はもう貴女じゃないとだめなんです」

そう声が聞こえたような気がした。

 

アタシの傲慢さからの空耳なのか

確かめようと君の顔を見上げると

君の目は天井の何処かを見つめていて

その唇はからっからに乾いていて

 

それがとても愛おしくて

ふいにキスをしたくなったの。

 

アタシと君との接点が極力無いようにと

どこも触れないように愛撫していたのに

(アタシはアタシの体内から出る吐息で君を愛でていた)

 

君の体温や湿り気をほんの数ミリの距離で感じてきたのに

(君はアタシの肌を感じ取ろうと大きく息をしてたね)

 

薄い唇は乾いたまま

舌先を触れることもなく こどものようにキスをして

君は少しも動くこともなくアタシのなすがままで その掌も上向きで ただ荒く息をしていた。